【ふかし軒理まる家】「第8話 屋根下地」
岐阜市で建築中の「ふかし軒理(おさ)まる家」、通称「ふかし軒の家」は先日上棟式を迎えました。上棟式は木造建築の大きな節目ではありますが、翌日も休むことなく工事は続きます。建て方の応援に来てくれた大工さんにしばらく残ってもらい、引き続き耐力面材を張りました。
2018年6月6日(水)
こんにちは。現場監督の丹羽政雄です。本日6月6日、お休みを頂いております。家内と二人で人生初の人間ドックを受診します。数ヵ月前から私の誕生日に決行しようと計画していました。そうなんです、実は今日は私の誕生日です。晴れて42歳になりました。
そして新しい職人さんも現場に入ってきました。瓦屋さんです。建て方工事の進捗目標にしていた屋根防水紙までがしっかり完了しましたので、テンポよく屋根工事が始められます。今回は瓦葺きを語る前に、その屋根下地についてご紹介したいと思います。ほどなくして瓦の下に隠れてしまう屋根下地にこそ、私達の想いが込められています。
まずは屋根用の防水紙「ルーフィング」。工事現場で良く見かけるのは黒色や緑色の「ゴムアスルーフィング」です。ゴムとアスファルトが主原料の防水紙です。一方「中島とつくる家」では、瓦屋根にはこの白いルーフィングを標準採用しています。「透湿ルーフィング」と言いまして、その名の通り屋根の防水紙でありながら湿気を透(とお)す性能があります。水の粒子よりも小さく水蒸気の粒子よりも粗い不織布でできています。商品名はセーレン社の「ルーフラミテクトRX」です。
熱さ寒さや、雪や雨、そして湿気に曝される屋根は、時折とても過酷な条件になります。そんな中でルーフィングの裏側が結露することがあります。ルーフラミテクトはそんな湿気を上部に放出するので、湿気による屋根野地の腐食等が劇的に軽減します。
また間近で良く見ると、実は少しキラキラ光っています。表面にアルミが蒸着されていて、遮熱効果もあります。とは言え、個人的にはそれほどの効果はないような気もします。
ルーフィングの上には、流れ方向に木質の棒を打ち付けます。「紙押え」と言います。ルーフィングを押えるのでそう呼ばれますが、万が一瓦の下を潜った雨水をルーフィングの上で滞りなく軒先まで流れさせるための隙間を確保するのが専らの役割で、とても重要な部材です。
その上に取り付けてあるのが「瓦棒」。「中島とつくる家」の瓦葺きは、葺き土を使わない乾式工法です。葺き土を使う湿式工法は、屋根が重くなる上防水性能が確保しにくく、私達は採用しません。紙押えと瓦棒が織り成す縦と横が格子状に整然と組み合わさった様(さま)は、覆ってしまうのがもったいないぐらいです。
先ほど透湿ルーフィングによる屋根の透湿性能をご説明しましたが、実はこだわりどころがもう一つあります。屋根の防水層と断熱層の間の空気を動かす「通気工法」を採用しています。軒先付近で取り入れられた外気が屋根面で温められ上昇し、棟にある換気部材より放出されます。暑い夏の日の屋根面の熱を室内に伝えない仕組みであると同時に、室内で発生し屋根に入った湿気を滞りなく抜く仕組みでもあります。
外壁における通気層はこの20年あまりで業界のスタンダードとなりましたが、屋根通気に対する認識は比較的低いように感じます。しかし先ほど述べました屋根面の過酷な条件を考えると、壁通気以上に屋根通気の必要性は高いと思います。
「中島とつくる家」では、瓦葺きの乾式工法、ルーフィングの透湿性能、そして屋根通気により、屋根の寿命を担保しています。
丹羽政雄